研究概要 |
我々は平成4-5年度の2年間にわたり慢性肉芽腫症の遺伝子解析とその応用、細胞株を用いた活性酸素を測定する系の確立を試みてきた。慢性肉芽腫症患者は他施設の協力で20家系21症例集積できた。そのうちの16家系17症例は伴性劣性型と判定し、その遺伝子解析を施行した。サザン法でこれらの患者間の異質を検討したところ、4家系で正常には認められないパターンが検出された。これらは、病因と関連するものであり、それぞれに異なっていて、遺伝子レベルでの多様性が推測された(Pediatr Res 31:516-519,1992)。また遺伝子解析をさらに進め、7家系でのその変異を解析できた(Eur J Pediatr 152:469-472,1993;Eur J Haematol in press;submitted for publication)。解析の結果、判明した変異はその種類、部位が家系ごとに異なっており、サザン法での結果を裏付けるものだった。同時にこの結果を患者の姉妹の保因者診断に応用し、3人を保因者、1人を保因者ではないと確定できた。これは主にNBT還元能から判定していた従来の方法に比し、正確性においてきわめて優れるものである(平成4年度厚生省特定疾患免疫不全症候群班会議)。また我々は正常人、患者からEpstein-Barr(EB)ウイルスによるB細胞株を樹立し、長期培養の困難な食細胞に代わる活性酸素産生の測定系を確立した(日本臨床学会雑誌投稿中)。この系において正常人では活性酸素が検出され、それがγ-IFNで増強されるがCGD患者群ではいかなる条件でも有意な活性酸素が検出されないことを示した。この系は遺伝子を導入してその機能発現を検索する良いシステムとなると思われる。
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