研究概要 |
本研究では,急性膵炎の発症機構の本態を膵腺房細胞内での酸素分泌障害と考え,膵外分泌機構の構成因子である細胞骨格系と低分子量GTP結合蛋白質(G蛋白質)の動態を,動物実験モデルや臨床材料を用いて解析することを目的とし,平成4年度には,ラットの軽症膵炎モデルであるセルレイン誘起膵炎において微小管形成障害が存在すること,この微小管形成障害を微小管安定剤であるタキソールによって回復するとセルレイン誘起膵炎が抑止できることを明らかにし報告している。 平成5年度はまずラットの単離膵腺房においてセルレイン誘起膵炎を再現し落射蛍光顕微鏡により観察し微小管の形成がin vivoで観察されたと同様に障害されていること,さらにタキソールの添加によって微小管形成障害と膵炎に特徴的な形態学的変化が消失することを,in vitroで証明した。一方,我々がはじめてラットの肝臓より単離精製したG蛋白質であるrab11p24の動態を,すでに作成していたこれに対するモノクローナル抗体を用いてその局在を落射蛍光顕微鏡により観察し,これが正常では核上部の細胞質に局在していることを確認した。また,ラット単離膵腺房のsubcellular fractionationを行い,無刺激では細胞質に存在するrab11p24がコレシストキニンによる刺激によって膜画分に移行することを明らかにしている。さらにセルレイン誘起膵炎から採取した単離膵腺房において同様の解析を行い,rab11p24の膜画分への移行が抑制されている結果を得ている。現在は,この現象が上記のタキソール投与で抑止され得るか否かを検討中であり,この結果によりセルレイン誘起膵炎における酵素分泌抑制の分子機構が明らかになるものと期待される。 来年度は,この成果に基づいて他の膵炎モデルや臨床材料を用いた解析を進める予定である。
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