研究課題
一般研究(A)
関節拘縮は罹患関節に機能障害を遺す重要な病状であるが、その治療は経験に基づいており、科学的根拠に乏しい。その大きな理由の一つは、ヒトの関節拘縮に類似する適切な動物モデルが存在しないからである。再現性のある関節拘縮動物モデルを作成して関節周囲組織に起こる変化を観察することにより拘縮の病態を明らかにし、拘縮の予防や治療に応用できる方法を見いだすことを目的に本研究を行った。動物モデルとしては家兎の膝関節を創外固定する関節拘縮モデルを開発し、このモデルを用いて実験を行った。この結果、拘縮に伴う関節周囲組織の変化はかつて報告されていたような線維性結合組織の増殖による癒着ではなく、関節を構成する周囲軟部組織の結合織成分の増加によるものであることが明らかになった。ヒトの拘縮の病態を明らかにするために、進行性に関節拘縮をきたす疾患である強直性脊椎炎患者の人工股関節手術時に得られた関節周囲軟部組織を分析した。その結果、臨床的にはほとんど可動域のない高度の拘縮を呈していたにもかかわらず、非可逆的変化は存在せず、拘縮モデルの結果と同様に結合織の主成分であるコラーゲンやエラスチンの増生を示した。以上の結果から二次性炎症を生じさせない範囲の可動域訓練が有効と判断し、人工膝関節手術後の患者に対して早期の自動可動域訓練を導入し、以前から行なっていた持続的他動運動訓練装置を用いた方法と比較することによりその効果を判定した。その結果、早期の自動可動域訓練は人工膝関節手術後の可動域獲得に有効であることが明らかになった。本研究によって関節拘縮の病態は可逆性であり、自動的に可動域訓練を行なわせることが治療上有効であることが明らかになった。
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