研究概要 |
損傷された関節細胞を修復する際に、軟骨が決して石灰化ないしは、骨化しないことが望まれる。私達は、犬の膝関節の自家骨軟骨移植実験において、UP-SIDE-DOWNにインプラントした実験群では、軟骨細胞による修復が行われなかったことから、関節軟骨細胞は、細胞層によって形質、特に石灰化誘導能に関する形質に、本質的な差があるのではないかと考えた。本研究の目的は石灰化ないし軟骨細胞による関節軟骨の修復を可能にするとともに、軟骨細胞の形質及び培養条件下の形質維持についても、解明することにある。 1)犬膝関節を用いて、自家骨軟骨移植とUP-SIDE-DOWNに移植した実験群の関節軟骨修復過程を比較的に検討した結果、後者では術後三ヶ月で軟骨は繊維組織に修復され1部に骨化を認めた。 2)ラット関節軟骨細胞のisograft,Allograftによる免疫学的差異についても12ヶ月にわたって修復過程を観察した。その結果、両群間に術後8週の時点で軟骨下骨のリモデリングに差を認めたものの、12ヶ月後には硝子軟骨による同様の修復を示した。尚、コントロールとしてコラーゲンのみインプラントした実験群では、繊維組織により修復された。 3)関節の骨軟骨欠損を修復させる一つの方法として、家兎の腸骨に骨切りを加え10日後の仮骨を利用して欠損部の修復を試みる実験を行った。骨切り10日後の仮骨は未分化問葉細胞に富み家兎膝関節内に作成した欠損部は2ヶ月後に硝子軟骨により修復された。 以上の研究により、関節の骨軟骨欠損を修復にあたって、培養軟骨細胞による修復に免疫学的相違の少ないこと、骨折仮骨によっても修復されることなどが明らかになり、関節の修復に軟骨細胞の果たす役割がより明らかにされた。
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