研究概要 |
本研究の初年度にあたり、各種泌尿器科癌由来細胞株を用い、DNA/bromodeoxyuridine(BrdU)二重解析による増殖性の検討を行った。すなわちHoechist33342による生細胞に対するDNA染色を行いこれら細胞をGO/GI細胞とnon-GO/GI細胞に選別し、その増殖性の差異および各種薬剤感受性の差を検討した。GO/GI細胞においてもnon-proliferating細胞とproliferating細胞が存在し、cell-cycle specificな薬剤(Metho-trexate,vinblastine)に対する感受性はnon-proliferating細胞において低値であった(第二回泌尿器科細胞解析研究会にて発表、1993年2月)。一方、腎細胞癌および膀胱癌の増殖浸潤性とp53癌抑制遺伝子とは密接な関連が示され(Am.J.Clin.Pathol.,97:s38-s47,1992)、現在BrdU標識率による増殖性とp53を中心とした遺伝子変異との関連が検討中である。さらにヒト膀胱癌においてはフローサイトメトリーを使用した検討によりDNA aneuploidy、増殖性の高い腫瘍において悪性度あるいは浸潤性が高いことが判明した(J.Urol.,印刷中)。一方、精巣腫瘍においては腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の分布様式が腫瘍の浸潤性と関連する可能性が示された(Virchows Archiv A Pathol Anat.,421:409-413,1992)。さらには膀胱癌培養細胞(KU-1)においてp-glucoprotein(P-gp)の発現が認められ、adriamycineの感受性が有意に低下していた。このP-gp発現様式は同一細胞株においてもheterogeneityが存在し、P-gp非発現腫瘍中極一部ではあるがP-gp陽性細胞が存在することが明らかとなった(日本泌尿器科学会総会発表予定)。 以上の結果より腫瘍内異質性が癌の増殖あるいは治療抵抗性を説明する大きな要因となり得ることが示された。
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