研究分担者 |
宮川 治美 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (40239356)
斉藤 史郎 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80170504)
丸茂 健 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80138130)
馬場 志郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00051889)
橘 政昭 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (70129526)
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研究概要 |
本研究の最終年度にあたり従来の研究の総括および本研究の最終目的である腫瘍異質性と癌浸潤性との関連を明らかにすることを研究の主題とした。すなわち、 1.膀胱癌、上部尿路癌においては、DNA aneuploid、高い増殖性を呈する腫瘍に浸潤性が高いことが示され(J.Urol.152,p76‐80,1994.,Cancer Detection and Prevention,19,in press)さらに表在性膀胱癌における膀胱内再発はDNA aneuploid、高増殖活性腫瘍において高頻度に認められた。 2.一方、膀胱癌細胞のp53 mutationを検討すると30例の表在性膀胱癌中4例にmutationを認めその内3列に再発が認められた。再発症例3例の内2例は初発腫瘍と再発腫瘍とで同部位のmutationが存在したが、1例ではheterogeneityが認められ、更にその後浸潤癌へと移行し浸潤性に富むことが認められた(J.Urol.,印刷中)。 3.腎細胞癌では生理活性物質産生腫瘍のin vitro培養ならびにヌードマウス移植に成功した。この内エリスロポエチンならびにgranulocyte macrophage colony stimulating factor(GM‐CSF)産生腫瘍のクローニングよりこれらマーカー蛋白産生細胞における増殖性の亢進、易転移性が示された。 4.同様に前立腺癌においてはtumor necrosis factor産生腫瘍における生物学的悪性度は高く、これらサイトカイン産生腫瘍における浸潤性が示された。 5.一方、α‐fetoprotein(AFP)産生精巣腫瘍におけるAFP産生能と増殖性を検討するとAFP産生細胞の増殖性はむしろ低下していた。一方、この細胞に対し、レチノイド酸を添加培養するとAFP産生能は著しく亢進したが、増殖性は低下を認めた。 6.以上の結果より癌細胞における腫瘍内異質性は癌細胞の分化と密接な関連を有し、癌細胞がマーカー蛋白産生など、何らかの分化傾向を示す時その細胞生物学的悪性度は高まることが示された。
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