(1)エストロゲン優位は、子宮内膜癌の発癌増殖と密接な関係があり、これらの分子機構を知る上で、正常子宮内膜と子宮内膜癌にエストロゲンと関係して特異的に発現しうる遺伝子を検討した。 子宮内膜癌13例で、エストロゲン・レセプター(ER)のエストロゲン結合ドメインをコードするER-SBDmRNAは、1例検出できなかった。ERのDNA結合ドメインをコードするER-DBDmRNAは、3例の点突然変異があった。細胞外ドメインをコードするerbB-1やerbB-2 mRNAを発現していない症例が各々12例と8例あった。これらの遺伝子異常が積み重なり、さらに共同作用して子宮内膜癌が発癌増殖する可能性が示唆される。 (2)正常子宮内膜、子宮内膜癌、ウサギ子宮にエストラジオール-17β、エストロン、エストリオールと特異的に、しかも別個の固有のレセプターが存在することを明らかにした。 また、ウサギ(雌、雄)の身体各組織にテストステロンとデヒドロテストステロンと特異的に、しかも別個の固有のレセプターが存在することが明らかとなった。その上、身体の各組織における両者のレセプターの量に雌雄差があり、これが男女の生物学的発現の差や性ステロイドと関連する疾患(心疾患、骨粗鬆症、自己免疫疾患)の男女差に関連すると考えられた。 (3)正常子宮内膜や子宮内膜症組織の細胞内にSHBG(mRNAの発現)やCBG(mRNAの発現)が存在し、性ステロイドにより、その合成が調節されている。子宮内膜症ではSHBGmRNAが優位に発現され、エストロゲンの貯蔵、すなわち、エストロゲン作用の発現を優位にしている。
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