研究概要 |
女性生殖器ならびにそれ由来の良性、悪性病変やその周辺環境では基本的には性ステロイドによって細胞増殖・機能が調節されている。性ステロイドの作用と関係するオンコジーンの発現や性ステロイドのレセプター作用も密接に細胞増殖・機能と関わっている。そこで、これら増殖・機能に関わる因子のmRNAレベルで遺伝子(変異)を検討し、その生物学的意義を明らかにする。1.SHBG/CBG(mRNA)がヒト子宮内膜で合成され、しかもエストロゲン/プロゲステロンによってその合成が調節されている。この内膜の良性病変である子宮内膜症組織にもSHBG/CBG(mRNA)が発現するが、SHBGが過剰発現され、エストロゲンの豊富な環境を作り出している。2.子宮内膜症の腹水中に豊富なマクロファージはエストロゲン/プロゲステロンおよびその受容体を介して分化誘導されるが、その場合、M-CSF受容体の遺伝子fmsの発現が促進され、さらにチロシンキナーゼの活性化をもたらす。その結果、マクロファージは活性化され、IL-1やTNFの産生が亢進する。また、抗エストロゲン作用を有するダナゾールはこれらマクロファージで起こる現象を抑制する。3.エストロゲンによって子宮でHa-ras,c-myc,fos,jun(mRNA)が誘導されるが、子宮内膜、内膜癌、子宮筋,子宮筋腫ではこれらは異なった発現をするのは、エストロゲン/プロゲステロンの作用発現の違いによる。4.子宮内膜癌の発癌・増殖にエストロゲンが密接な関係をするが、エストロゲンの分子機構と関連して、癌化するとエストロゲン受容体のドメインの突然変異(30%)、成長因子のerbβ-1やerbβ-2の細胞外ドメインの欠落(62%)がみられ、プロゲステロン受容体にはA,Bの型があり、A型はB型の活性を抑制するが、内膜癌では悪性度(転移)が高くなるとB型の発現が強くなる。これらの遺伝子異常が積み重なり、内膜癌が発癌・増殖する可能性が示唆される。
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