研究概要 |
口腔内血管の血管作動物質,エンドトキシン,およびフリーラジカルとの相互作用を統合的に研究し,以下の結果が得られた。 1.キニン類とイヌ舌動脈平滑筋: (1)肺動脈,腸間膜動脈および総頚動脈は,ブラジキニン(BK)によって弛緩したが,舌動脈は収縮した。 (2)BKによる弛緩反応は,acetylcholineと同様に内皮細胞依存性であった。 (3)BKによる舌動脈の収縮反応は,内皮細胞非依存性であった。 (4)以上の結果から,BKの舌動脈収縮作用はα-receptor,H_1-receptpor,prostaglandin,Ca^<2+>channelあるいはB_1-kinin receptorを介する反応段階によってもたらされる可能性が示唆された。 2.キニン類とCa^<2+>: (1)BKのイヌ舌動脈収縮作用は,α-受容体antagonistはBKに影響を受けなかった。 (2)電位依存性Ca^<2+>channelに選択性のあるCa^<2+>antagonistはBKによる舌動脈収縮を部分的に抑制した。 (3)BKによる舌動脈収縮は,外液Ca^<2+>除去によりほぼ完全に消失した。 (4)血管平滑筋のNa^+,K^+-ATPase活性の抑制は,BKの舌動脈収縮を増強した。 (5)B_1-kinin antagonistは,BKの舌動脈収縮に影響を与えないか,あるいはむしろ増強させる傾向を示した。 (6)B_1-kinin agonistは,舌動脈を濃度依存性に弛緩させた。 (7)indomethacinは,BKの舌動脈収縮に影響を与えなかった。 (8)以上の結果から,KBの舌動脈収縮作用は,α-受容体作動性Ca^<2+>channelおよびprostagalandins生合成を介する作用ではなく,主として,B_2-kinin受容体作動性Ca^<2+>channelとNa^+-Ca^<2+>交換機構の活性化を介した細胞内へのCa^<2+>流入増大によってもたらせるものであると結論される。 3.ヒスタミンとウサギ舌動脈平滑筋:ヒスタミンは,適出舌動脈標本を収縮させるが,この機構に細胞内Ca^<2+>ストアからのCa^<2+>遊離が関連することを明確にした。さらにヒスタミンによるCa^<2+>遊離はカフェイン類以の機構(Ca^<2+>誘発性Ca^<2+>遊離)を介することをスキンドファイバーを用いて直接証明できた。 4.LPSとフリーラジカル:ESR法によりLPS自身フリーラジカル発生能を有することを確認した。このフリーラジカル種はハイドロキシルラジカルであり,これまで知られているHaber-Weiss反応を介さない新しい機構で発生することの証明がなされた。 以上の研究経過から,LPS投与による病態モデル実験を導入し,平滑筋の反応性について解析できる素地が整った。
|