研究概要 |
顎機能異常に対する臨床的機能検査において,客観的評価を導くための正常値および正常範囲の設定確立を目的として種々の顎機能検査を行ってきた。 誘発筋電図および筋線維伝導速度の研究では,小型多極表面電極を用いることによりその大部分が頭髪に覆われている側頭筋においても計測を行えるようになった。その結果,M波が導出でき,筋線維伝導速度の算出ができた。今回,実験的筋疲労を発現させた結果,筋線維伝導速度は低下した。筋深部温の研究では,顎機能異常患者では正常者に比べ咬筋上部および下部ともに大きな左右差を示した。また,片側咬筋に筋痛を認めた患者2名において,治療に伴う症状の緩解につれて咬筋上部および下部深部温ともに左右差が縮小した。女性では性周期変動に伴う咬筋深部温を計測した結果,排卵日前後に深部温の左右差が大きくなることが分かった。筋圧痛閾値法の研究では,男性および女性健常被験者,合計340名の咬筋4部位,側頭筋2部位,両側12部位についてPPTを測定し,この結果から2種類の正常範囲を決定した。さらにこの2種類の正常範囲から外れるものと,どちらか一方の正常範囲のみ異常を示すものがみられた。咬合接触に関する研究では,当講座が開発したadd画像法により,顎機能異常患者では正常者に比べ咬合接触バランスが大きく崩れていることなど,多くの知見を得ることができた。T-Scanに関する研究においても,顎機能異常患者では正常者に比べ咬合接触バランスが大きく崩れていることが実験データより判明した。EMGプロフィールに関する研究においては,健常被験者5名から,咬筋,側頭筋および顎二腹筋の咀嚼側および非咀嚼側におけるEMGプロフィールの平均値および標準偏差を求めることができた。
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