研究概要 |
申請者らは顎機能異常に関する客観的評価を導くために,各種検査法の正常範囲を確立することを目的として研究を行ってきた。 誘発筋電図法では,咬筋および側頭筋において誘発されたM波から筋線維伝導速度(MFCV)を算出することができた。咬筋に筋疲労を負荷してMFCVを計測した結果,神経線維ならびに神経筋接合部には疲労の影響が及んでいないことが示唆された。また,咬筋および側頭筋の筋長を変化させMFCVを計測したところ,筋長の増加に伴ってMFCVは低下した。健常者において片側ガム咀嚼を行わせ下顎運動と咬筋中央部,側頭筋前部および顎二腹筋前腹の筋電位を同時記録しEMGプロフィールを作成したところ,各筋において咀嚼開始60秒以降で安定した形態を示した。咬筋および側頭筋のEMGプロフィールは1咀嚼ストロークを100%とした時の30%付近を,顎二腹筋では80%付近をピークとした包絡線を呈した。また顎機能異常患者のEMGプロフィールから,初診時と症状消退後では明らかな変化が認められ健常者のパターンに近づいた。T-Scanシステムでは正常範囲を設定することができた。筋圧痛閾値(PPT)に関しては,健常者10名および顎機能異常患者4名の咬筋4部位および側頭筋2部位について計測を行ったところ,健常者では経日的にみても各部位のPPTに左右差を認めなかったが,顎機能異常患者では左右差が認められ0症状の改善により両側の筋のPPTの左右差が小さくなり,健常者の結果に近づいた。咬合接触に関しては,add画像から顎機能異常患者では健常者に比べ咬合接触バランスが大きく崩れていることが確認された。筋深部温に関しては,両側咬筋の深部温の計測から,健常者では認められなかった左右差が顎機能異常患者では認められた。
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