研究概要 |
ナトリウム利尿ペプチド系の生理的役割を明らかにするためには,哺乳類とは大きく異なる環境に適応している生物の系を解析するのも有用と考え,ウナギのナトリウム利尿ペプチド系の解析を進めてきた.ナトリウム利尿ペプチド系に対する受容体が比較的多く存在するエラのcDNAライブラリーをもとに,これまで知られていない受容体を探索したところ,D型ともいうべき新型受容体が存在することを見いだした.D型はC型と同様に細胞質領域が短く,両者のホモロジーは70%であった.C型はジスルフィド結合したホモダイマー構造をとっているが,新しく見つかったD型は主として4量体として存在することが明かになった.リガンド特異性はブロードで,ウナギのANP,VNP,CNPをはじめ,ラットのリガンドやC-ANFもnMのオーダーで結合した.組織分布は非常にユニークで,脳に多く存在した.哺乳類のホモログがとれれば,ナトリウム利尿ペプチド系の理解がより一層進むものと期待される.このように新型受容体(NPR-D)の発見は循環生理学の分野に新展開をもたらすものと期待される.特に,細胞質領域が短い受容体にも2種類あることが明らかになったことは,これまでクリアランス受容体としてあまり顧みられて来なかったC型受容体にも,より重要な生理機能がある可能性が強く,本研究で新しく見つかったD型と並んで,今後盛んに研究されることが望まれる.また,脳に比較的特異的なD型の詳細な脳内分布が決定されれば,脳内ナトリウム利尿ペプチド系の理解もより一層深まろう.4量体構造をとる新型受容体(NPR-D)と作用機序が不明なアンタゴニストHS-142-1との相互作用を解析し,HS-142-1は4量体構造を有する受容体(A,B,D型)に特異的なアンタゴニストであることを明らかにした。
|