研究概要 |
群馬大学生体調節研究所では生理活性ペプチドの検索に必要な研究材料を供給するために、平成6年度に研究代表者らが中心になって本邦の大学としては初めての大型ペプチド抽出精製装置を導入して、その体制を整えつつある。さらに平成6年度には新しい生理活性ペプチドの分離精製の研究を行い、以下の結果を得た。1)86個のアミノ酸残基からなる新しいコレシストキニン(CCK)遊離因子を腸抽出液から分離し構造決定した。このCCK遊離因子は腸管粘膜から内腔に放出された後、極く微量でも血中へのCCKの遊離を促す外分泌性ホルモンで、新しいタイプの消化機能調節因子である。2)我々は、すでに脳軟膜細胞が多量のIGF-2,IGF-BP,B trace proteinを分泌することを明らかにしたが、さらに脳軟膜細胞がApolipoprotein E,Cystatin Cなどを産生し、これらが神経細胞死に関連したスカベンジャー蛋白質として役立っていることを見いだした。これらの事実は、脳軟膜が生理活性物質を分泌し生理的に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。3)我々は、膵ラ氏島細胞のmRNAをアフリカツメガエル卵母細胞に注入すると多くの受容体が発現することを利用して、膵ラ氏島に存在する未知のペプチド受容体に対するリガンドの検索を各種のペプチド抽出物を用いて行なった。その結果、特に腸管の抽出液に強い反応を見いだし、そのペプチドの分離精製を行い、構造決定の研究を進めている。このような研究はインスリン分泌機構、糖尿病の病態生理の解明のための全く新しい知見を提供する可能性がある。4)細胞性粘菌が産生する分化誘導因子DIFがマウス由来の腫瘍細胞AR42Jに反応して細胞内カルシウムを上昇することを見いだし、現在、脊椎動物に存在する未知の分化誘導因子DIF様物質の検索を進めている。
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