無脊椎動物の血球細胞機能とその生体防御系における役割

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04404090
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 岩永 貞昭 九州大学, 理学部, 教授 (90029942)
• 研究分担者: 太和田 勝久 九州大学, 理学部, 助教授 (20029507) ; 藤 義博 九州大学, 理学部, 教授 (60037265) ; 川畑 俊一郎 九州大学, 理学部, 助手 (90183037) ; 大野 素徳 九州大学, 理学部, 教授 (30038434)
• キーワード: (1→3)β-D-グルカン / G因子 / カブトガニ血球 / 体液凝固機構 / 無脊椎動物 / 生体防御系 / cDNAクローニング / セリンプロテアーゼチモーゲン

研究概要

我々がとり挙げてきたカブトガニの体液凝固は、血リンパに存在する顆粒球の凝集-崩壊によって起きる。こうした反応に関与する体液凝固については、リポ多糖によって惹起される凝固系を中心に、すでにC因子やB因子、Proclotting enzyme、コアギュローゲンが同定され、それらの分子構造も明らかにされた。一方、カブトガニの血球細胞には、β(1→3)-D-グルカンによって惹起される凝固系も存在し、Proclotting enzymeの活性化を介してゲルを形成する。β(1→3)-D-グルカンは真菌類の細胞壁の主要な構成成分であり、この凝固系もカブトガニの異物排除機構において重要である。
本年度、我々はβ(1→3)-D-グルカン感受性プロテアーゼチモーゲン(G因子と命名)を血球抽出液から精製するとともに、そのcDNAクローニングを行った。G因子はa(72kDa)とb(37kDa)の2つのサブユニットから構成されており、β(1→3)-D-グルカンの存在下、自己触媒的に活性化される。先ずa、b両サブユニットの部分アミノ酸配列をもとに、オリゴヌクレオチドプラトマーを合成し、このプライマーを用いPCRを行い血球由来poly(A)^+RNAより、それぞれのサブユニットに対応するDNAフラグメントを得た。このDNAフラグメントをプローブに用い、cDNAライブラリーをスクリーニングした。bサブユニットについては、full lengthのクローンが得られ、全塩基配列を決定した。その結果、bサブユニットは、典型的なセリンプロテアーゼであることが明らかになった。一方、aサブユニットについては、一部の塩基配列及び予想されるアミノ酸配列が明らかになったが、既知のタンパク質との有意な相同性は見いだせなかった。現在、aサブユニットのcDNA cloningは進行中である。

研究成果

• [文献書誌] Yoshiki Miura: "Preparation and Properties of Monoclonal Antibodies against Lipopoly saccharide-Sensitive Serine Protease Zymogen,Factor C,from Horseshoe Crab(Tachypleustridentatua)Hemocytes." J.Biochim.112. 476-481 (1992)
• [文献書誌] Shouichi Higashi: "Tissue Factor Potentiates the Factor VIIa-catalyzed Hydrolysis of Ester Substrate." J.Biol.Chem.267. 17990-17996 (1992)
• [文献書誌] Hitoshi Nishimura: "Human Factor X Has a Tetrasaccharide O-Glycosidically Linked to Serine-61 through the Fucose Residue." J.Biol.Chem.267. 17520-17525 (1992)
• [文献書誌] Yoshikatsu Shigematsu: "Expression of Human Soluble Tissue Factor in Yeast and Enzymatic Properties of Its Complex with Factor VIIa." J.Biol.Chem.267. 21329-21337 (1992)
• [文献書誌] Hiroyuki Takeya: "Coahulation Factor X Activating Enzyme from Russill's Viper Venom(RVV-X):A Novel Metalloproteinase with Disintegrin(platelet aggregation inhibitor)-like and C-type Lectin-like Domaims." J.Biol.Chem.267. 14109-14117 (1992)
• [文献書誌] Toshiyuki Miyata: "Prothrombin Salakta:Substitution of Glutamic Acid-466 by Alanine Reduces the Fibrinogen Clotting Activity and the Estarase Activity." Biochimestry. 31. 7457-7462 (1992)
• [文献書誌] 岩永 貞昭: "Molecular Mechanism of hemolymph Clotting System in Limulus.Thrombosis Research" Pergamon Press(New York), 32 (1992)
• [文献書誌] 牟田 達史: "無脊椎動物の生体防御(名取俊二,野本亀久雄,古田恵美子,村松繁(編))" 学会出版センター, 28 (1992)