研究課題/領域番号 |
04404093
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻本 賀英 大阪大学, 医学部, 教授 (70132735)
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研究分担者 |
鎌田 真司 大阪大学, 医学部, 助手 (20243214)
恵口 豊 大阪大学, 医学部, 助手 (20243206)
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キーワード | bcl-2遺伝子 / アポトーシス / プログラム細胞死 |
研究概要 |
bcl-2がん遺伝子は、他のがん遺伝子とは異なり細胞死(アポトーシス)を抑制する活性を示し、がん遺伝子の中でもユニークな存在になっている。この研究課題の平成4年度の目的は、神経細胞におけるbcl-2の機能の解析とbcl-2欠損マウスの作製およびその解析である。 副腎髄質褐色細胞腫株(PC12)よりヒトbcl-2遺伝子を過剰発現する細胞株を樹立した。無血清により細胞死を誘導する系でbcl-2は細胞死抑制活性を示し、その後の長期の培養の後、PC12/bcl-2細胞は神経細胞に分化することが観察された。bcl-2の細胞分化における役割の可能性を含め神経細胞分化のプロセスの解析に有用な実験系が開発されたと考えられる。 bcl-2欠損マウス作成に関しては、遺伝子置換/欠失法によりbcl-2遺伝子のターゲッテイングに成功した。bcl-2-/-マウスは正常に生まれるが、生後10日目あたりから成育不全が顕著になる。bcl-2-/-マウスにおいて個体差はあるが次のような異常がみられた。(1)耳が小さい(2)polycystic kidney(3)リンパ球のアポトーシスによる胸腺および脾臓のアトロフィ(4)小腸の発育不全(5)毛の白色化などである。胚発生期における特に神経組織でのbcl-2の高発現にもかかわらず、神経組織における顕著な異常は観察されなかった。bcl-2の機能と類似の機能を持つ他の遺伝子による代償によるものと思われる。 ここで観察された全ての異常がbcl-2欠損による細胞死の促進であるかいなかは今後の研究に待たねばならないが、アポトーシスにおいて活性酸素の役割が重要視されはじめており、特に毛の白色化現象などからbcl-2のanti-oxidant経路での機能をクローズアップすることが出来る。
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