研究課題/領域番号 |
04451007
|
研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
山折 哲雄 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (40102686)
|
研究分担者 |
森岡 正博 国際日本文化研究センター, 研究部, 助手 (80192780)
柏岡 富英 国際日本文化研究センター, 研究部, 助教授 (40142591)
鈴木 貞美 国際日本文化研究センター, 研究部, 助教授 (60179207)
|
キーワード | 生命倫理 / いのち / 宗教 / 日本人 |
研究概要 |
平成4年度は、主に近代文学史・文化史にあらわれた生命文献の解読を行ない、そこに見られる宗教性について考察を加えた。たとえば、1910年代に顕著になってきたいわゆる「大正生命主義」の文献群を調査し、永井潜の生命論や、佐藤春夫の風流論、そして坪内逍遥の文章などの中に、ホーリスティックな生命観・自然観が共通して存在していることをつきとめ、そこには自己と宇宙の相即的悟りに似た、独特の宗教観が潜在していることを解明した。 この背後には、伝統的な日本思想の水脈のほかに、当時のヨーロッパ思潮からの強い影響があったことがうかがわれる。このように、日本人の生命観の形成に関しては、いわゆる伝統的な背景のみではなく、ヨーロッパ等から輸入されたアイデアも強く影響している。この点の発見は、4年度の大きな収獲のひとつである。 また、1910年代に日本文化史でおきた「生命論」の隆盛と同じ現象が、戦後の1970年代以降に反復されており、この2度にわたる生命主義の波をどのように分析すればよいかという課題が浮上してきた。この点に関しては、次年度の研究テーマとしてさらに追求したい。 現代日本人の生命観のアンケート調査は、約200枚の回答を獲得し、現在それらを整理中である。特に、若い世代からの回答にすぐれたものが多く、今後の分析に期待がかかる。また次年度の調査として、筑波大学で行なわれる海外の生命観・自然観の調査と連けいして、日本と海外の生命観の比較調査を計画しており、今年度の日本での調査結果が、そこに生かされるはずである。
|