研究課題/領域番号 |
04451008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 正英 東京大学, 文学部, 教授 (90083708)
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研究分担者 |
西村 道一 茨城大学, 人文学部, 教授 (30114599)
天艸 一典 東京大学, 文学部, 助手 (80231984)
菅野 覚明 東京大学, 文学部, 助教授 (70186170)
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キーワード | 日本倫理思想史 / 自己 / 超越者 / 隠者 / 祀り / 物語 / 私小説 / 神話 |
研究概要 |
日本倫理思想史の流れの中で、とくに「個」や「私」をめぐる思索を課題とした思想をとり上げ、そこにおける「自己」把握のありようを、超越者との関係において解明することを目的として、下記のような研究を行なった。 即ち、(1)古物語の古注釈の収集・解読・整理、(2)中・近世の隠者に関する古伝承・寺伝・家伝の類の収集・整理、(3)物語の発生・構造・話型などに関する研究書の収集・解読、(4)近代文体成立期の文体・文法・資料の調査・収集・整理、さらに以上の基礎作業を前提に、(5)物語論と自己の捉え方についてのまとめ、(6)自然主義文学・私小説における自己把握を文体や方法の問題として捉え直し、その構造を解明すること、(7)近世隠者文学が近代自我の発生に及ぼした影響関係の検証を行なった。 これらの作業の結果、これまで研究史上の空白となっていた、近代以前の日本倫理思想における「個」や「私」について、次のような諸点が浮かび上がってきた。まず、日本思想における「私」やそれに対する「超越者」は、それぞれを実体として固定的に捉えようとすると、直ちに本質的内実が喪失されてしまうような構造を持っていることが明らかになった。このような特異な「個」と「超越者」を捉えるには、物語論、祭祀論、「能」のワキ・シテ論など、広義における「物語」の言語の関係性や構造を問題化することによって、間接的に把捉しうることが、同時に明らかになった。このことから、例えば神話の「カミ」の扱い、隠者の歌の意味、近代的自我と文学との必然的関係性など、多くのことを解明する方法的手がかりが得られたことは、今年度の研究の最大の収穫である。その一端は、論文等で(業積-覧参照)発表された。
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