舞楽系芸能に見られる狂言的要素の調査研究については、対象を静岡県周智郡森町に分布している3ヵ所の伝承に絞り、天宮神社十二段舞楽・小国神社十二段舞楽・山名神社舞楽の現地調査を行い、山名神社舞楽の狂言風流的な特殊性は、すでに失われてしまった中央における中世祇園祭の芸能を伝承しているものであり、舞楽とは直接関係のない伝承であることを証明した。その成果を「山名神社の芸能」として、「芸能史研究124」において公表しする。 民俗芸能に見られる狂言的要素の分類に関する研究については、郷土能の狂言(黒川能・能郷の能など)・風流踊りの狂言(綾子舞・惣谷の狂言など)・田楽芸の狂言(雪祭り・おこないなどの狂言)・神楽芸の狂言(太神楽・山伏神楽などの狂言)・念仏芸の狂言(大念仏狂言・鬼来迎など)・人形劇の狂言(のろま人形など)・舞楽の狂言(動物風流・座頭の坊など)、伝承地の多くは、伝承芸能の種目如何を問わず様々な形式、芸態の狂言的要素を付加しており、それらは「つなぐ芸」と「もどく芸」に分類して考えることができる。例えば、黒川能式三番の三番叟や里神楽のもどきは「もどく芸」であり、綾子舞や田植踊りの囃子舞は「つなぐ芸」と考えることができる。この分類方法をすべての民俗芸能に適合させるためには、まだ時間がかかる。
|