研究概要 |
本研究の目的は,プライミング事態で得られる事象関連脳電位(ERP)の特性を検討することであった. 1.実験:SOAの効果 プライムとターゲットの開始間間隔(SOA)がERPに及ぼす効果を検討した. 8名の被験者にSOVの刺激文(例えば、すずめは/魚で/ない.)を呈示し,記述内容の真偽を判断させた.その際,2番目の単語が,最初のカテゴリ名(SCN),異なるカテゴリ名(DCN),繰り返し(REP)の3タイプを設けた.REPを25%,SCN及びDCNをそれぞれ37.5%とし,S条件ではSとOとのSOAを200ms,M条件では800msとした.SとVとのSOAはいずれの条件も1600msとした. 前年度の実験と同様,REPのOには陽性波,DCNにはN400が出現した.SOAが短い場合,陽性波は影響を受けなかったが,N400の潜時は約100ms延長した.意味レベルの処理が終了するには200msのSOAでは不十分であったためと考えられる. 2.実験:プライミング促進及び抑制効果とERP プライミングの促進,抑制効果が強調される条件を設けて,各々に対応するERPの特性を調べた. 10名の被験者にプライム及びターゲットを継時呈示し,ターゲットに対する語彙判断を行わせた.カテゴリ条件では,プライムにカテゴリ名,ターゲットにその事例(関連試行),その他の単語(非関連試行),または非単語(非単語試行)を呈示し,反意語条件の関連試行ではターゲットとして,プライムの反意語を呈示した. 反応時間について,反意語条件ではカテゴリ条件に比べ促進,抑制効果ともに大きかった.N400には条件の効果はなかったのに対し,促進効果の増大は後期陽性成分の頂点潜時の短縮と関連していた.N400は行動指標で得られる抑制効果を直接反映しているのではないことが示された.
|