研究概要 |
本研究は本質的には「IF-THEN法」の国際版を構成することにある。「IF-THEN法」とは社会的交互作用事態における個人の「社会動機」(social motives)を心理学的ゲーム論を基盤として検出する研究代表者が開発してきた心理学的検査技法のことをいう。この検査で検出される動機群は9種の規範的動機群(individualism,masochism,altruism,aggression,cooperation,sadomasochism,competition,martyrdom,equalitarianism)の混合比によって表現される反応傾向であって、その分析プログラムは基本的にはすでに完成しており、反応の「信頼性」や「不確定性」なども算出できるかたちになっている一応完成した段階にある1種の行動論的心理検査法である。本検査法は、種々の特徴と多くの利点をもつが、特記すべきことはとくに交差文化的研究に対して優れた適性を具備していることである。その意味で本研究は、この利点を十分に活かして「IF-THEN法」に十分な国際性を与えるためにかなりの言語圈において使用に耐え得る国際版を作成することを目的としたものである。本研究における主要な具体的作業は、1)反応分析のために汎用性の高いプログラムを作成すること、2)各国において実際に実施可能にするために必要な被験者に対して配布する教示用紙を作成すること、3)「IF-THEN法」の国際性を高めるために各国の研究者が利用可能な検査法マニュアルを作成すること、である。研究の成果としては、プログラムについては基本的部分に関しては国際的に汎用性が高いIBMコンピュータ用に移植が完了しており、教示用紙に関しても、現在、日・英・独・仏・露・西・萄・蘭・伊・洪・波・瑞・諾・丁・土・亜・泰・韓・中(繁・簡)・越・馬・インドネシアの23言語への翻訳が一応完成している。また、マニュアルに関しては、日本語は勿論のこと、英文についても、細部の修正は必要であるが、基本的な部分はほぼ完成している。以上のことから、本研究はほぼ満足すべき成果が得られたといえよう。
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