染色体異常が原因であるダウン症者の早期老化を心理学的に明らかにするために、平成4年度の研究として地域の施設に通所するダウン症成人の早期老化徴候の実態を調査した。 方法.対象は東京都内にある成人を対象とした通所施設227カ所を調査対象とし、郵送により調査した。回収率41.4%であり94カ所の通所施設から回答があり、このうちダウン症者424名の個人調査票の回答が得られた。調査の内容は、1 処遇と実態 2 合併症、現在かかっている病気 3 行動傾向 4 老化徴候 5 対人関係 6 作業態度、日常生活能力 であった。 その結果、424名のダウン症者は、平均年齢28.0歳で最高年齢者49歳であった。まず、合併症では心臓疾患、聴覚障害、てんかん、鎖肛、巨大結腸症などがあり、また、り患している病気では約3分の2のダウン症が一つ以上の病気をもっていた。その内容は皮膚疾患、歯科疾患、眼科疾患などであった。また、健康上問題となる肥満を示すものが24.8%があった。行動傾向では、動きが少ない、情緒不安定になる、ひきこもり、おこりっぽいなどの傾向が顕著であった。老化徴候として能力や意欲の退化がみられ、身体的老化徴候では施設収容のダウン症者と比べ外見的な徴候は比較的少なかった。 来年度はこれらの実態を踏まえ、明らかに早期老化を示すダウン症者を対象として個別にその心理的特徴を明らかにする予定である。
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