本年度の研究目的・方法 平成4年度に実施した東京都内の各種通所作業所に通う地域で生活しているダウン症者を対象とした調査を元にして、今年度はダウン症者の早期老化の心理的機能を明らかにし、あわせてその評価方法を開発することを目的とした。対象者は、東京都内の福祉作業所の在籍している20歳-49歳のダウン症者40名である。個別に次の検査を行った。1)知能検査 2)ダウン症侯群の精神状態テスト 3)性格チェックリスト 4)ダウン症侯群の老化度チェックリスト 5)外見的老化尺度「精神薄弱者用外観的老化徴候尺度」 6)適応行動尺度(ABS) 7)体力・運動能力検査 8)精神症状・適応行動 9)合併症・健康状態 主な研究成果は次の通りである。 知能検査及び精神状態テスト(今回開発した検査)の結果では、知識や身体模倣・操作の機能に関しては加齢にともなう低下がみられなかったが、記憶、空間知覚は加齢によって退行していた。外観的老化徴候尺度によれば40歳以上のダウン症者が特に顕著であった。体力・運動能力では、20歳代後半をピークとして加齢にともない低下していた。さらに、今回我々が開発した「ダウン症侯群の老化度チェックリスト」は、その有効性が認められた。
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