研究概要 |
本研究の目的は、形態認識と方向変化との関係について、先に当研究者が提案した「情報タイプ理論」の妥当性を実験的に検討することである。ドイツの研究者達(Hollard & Delius,1982)がハトを被験体とし、方向変化を伴う鏡映像弁別を行わせたところ、いわゆるメンタル・ローテーションによる方向修正なしに弁別が行われたことを示す証拠を得た。この研究者達は、人間には検出できない鏡映像の回転不変項をハトが検出したという解釈を提出した。しかし、情報タイプ理論によれば、互いに鏡映像の関係にある形態の間には、弁別を可能にする回転不変項は存在しないはずであり、上記の研究者達も「回転不変項」がどのようなものであるかについては明らかにしていない。一方、情報タイプ理論は、メンタル・ローテーションを行わず、回転不変項にも依存せずに鏡映像の弁別を行う方法が存在することを明らかにしている。その方法を使用すれば、人間の場合もハトと同様の弁別行動を示すものと予測される。本研究は、その方法の使用に熟達するよう人間の被験者を訓練し、予測された行動が見られるかどうかを検討するために立案された。 平成4年度には、AVタキストスコープを中心とする必要機材を購入し、それを利用して実験を行うための計算機プログラムを作成した。AVタキストスコープに予期せぬ動作不良が生じたため、プログラムの作成は大幅に遅れ、まだ実験の開始には至っていない。しかし、正常に動作する部分のプログラムを使用して行った予備実験の結果は、上記の予測を裏づける傾向のものとなっている。
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