研究課題/領域番号 |
04451027
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
古崎 敬 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (60051281)
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研究分担者 |
増田 直衛 慶應義塾大学, 文学部, 助教授 (60118510)
山田 亘 高知大学, 教育学部, 教授 (40036653)
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キーワード | 知覚心理学 / 実験現象学 / 知覚の体制化 / 面の層化 / 非感性的完結化 / amodal completion / 図-地分節 |
研究概要 |
初年度の計画書に述べたごとく、それぞれの分担にしたがって実験現象学的立場から実験を行い、その結果に基づいて諸現象の生起の基礎にある諸法則の発見と、その妥当性について吟味してきた。本研究は知覚の体制化の問題の中でも主として非感性的完結化(amodal completion)と層化(stratification)の現象に絞り、すでに幾つかの重要な事実を見いだした。幾つかの実験のうち特に重要と考えられる結果の一部を要約すれば、1)いわゆる単純な一様な明度の輪郭図形であってもその内部が他の線分により分割されると、多くの場合、2領域は線分を含む同一平面として知覚されるより、むしろ図-地の関係を生み、同時に図として現れる面はビンの杯にみられるように地と異なる明るさの差を生じる。更に、図として観察される部分は地と比較して、その肌理が密(堅い)で、前方に突出し(層化)、色合いは鮮やかで、一般に明るく見える。これは“もの"が知覚される最も原初的な発生形態を示すものと考えられる。2)同一輝度でありながら2領域が重なって見える非感性的完結化を示す面において、それが静止している場合と運動している時では現象的様相を全く異にする。この事実は、実際に色または輝度の異なる相互に重なり合う複数の対象において観察される静止と運動における体制化の過程と同一原理に従うものと考えられる。さらに多様な現象を観察、吟味することにより、現在の分離をより精緻化することが出来るであろう。3)層化の現象は明るさの変化のみならず、形、大きさの変化をも生じさせる。例えば、二つのパターンを重ね合わすことにより両パターンの位置関係に依存して、パターン内に新しい分凝が生じ、その部分の全体に対する機能(帰属性)に変化をもたらし、同時に部分の現れ方も変わる。 今後、運動知覚等を含む多様な現象を観察、吟味し、現在の分類をより精緻化することにより、さらにより完成された知覚の法則性を導き、その本質に近づくことが出来るであろう。
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