研究概要 |
平成4年では,まず初めに,感情状態を操作するために従来用いられてきた手法について検討を行った.従来感情状態の操作方法としては自伝的記憶の想起・音楽によるもの・Velten流のムード誘導・催眼等が用いられきたが,本研究では,自伝的記憶の想起/音楽/Velten流のムード導入を検討した.自伝的記憶の想起では,ポジティブな感情導入において従来の方法を用いた場合には問題があることが見いだされ,改良が図られた.音楽を用いる方法では,適切なムードを導入する音楽が選定された.Velten流のムード誘導に関してはいくつかの方法を検討し,改良を加えた. 第1のテーマに関しては,Veltenの実験室における感情操作法を使用した実験を行った.ここではポジティブおよびネガティブな感情状態が記憶に及ぼす影響を自己生成の手続きによって検討した.基本的感情と考えられる好き・嫌いの対象を被験者に生成させ,それらの項目を含んだ物語を作成させ,その後妨害課題を行ない,この課題の終了後に再生テストを実施した.データとしての得られた再生テストの結果は,厳島・和田・末永(投稿中)で開発された体制化指標および主観的体制化指標によって分析中である. 第2のテーマに関しては,音楽を用いて感情導入を行い,沼崎(1990)の課題を用いて,自己関連情報収集行動について検討を行っている. 第3のテーマに関しては,将来の自己に関する社会的判断への感情状態の影響を実験的に検討した.明確な形の結果は得られなかったが,感情状態によって判断が異なることが示された.また,自己に関する知識を他者に対して呈示する状況を作り,自己知識内のどのような情報を呈示することが統制感と関連するかを検討した.自己が多面的に表象されていることを呈示することにより統制感が高まることが示された.
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