平成4年度は、本調査研究の初年度に当たるので、本研究課題を追求するための基礎的作業を中心に研究を進めた。すなわち、飲酒文化および飲酒行動に関する全国レベルにおける、あるいは、仙台、広島、松江など地方大都市における統計や既存データを集めた。また、それら3都市の断酒会のリーダー層に対し、飲酒行動に関する聞き取り調査を実施した。そして、飲酒文化と飲酒行動との典型的な結びつきを示すケースを数例選定し、それらに対して集中的な面接調査を行った。さらにマスコミ機関や酒造メーカーに対して、飲酒文化の形成と伝達の実態について聞き取り調査を行った。 これらの基礎的作業を通して、以下のような新たな知見が得られた。まず第一に、社会的にも個人的にも問題点を多く含むタイプである飲酒肯定文化と積極的飲酒行動との結びつきには、地域性や世代要因よりも家族要因との関連がよく強く見られた。第2に、飲酒行動についての家族規範と、その家族に属する個々のメンバーの飲酒行動への価値づけが衝突した場合、後者を優先させようとする傾向が若年層に顕著にみられた。第三に、酒類自動販売機の設置制限や撤廃等を求める運動は、従来市民運動家達や、教育関係者達を中心に担われてきたが、最近、医療関係者達もその運動の輪の中に加わり始めている。第四に、飲酒行動への誘因としてのマスコミの影響力は、若年層により強く作用していることが判明した。
|