今年度実施した主な調査・研究は以下の3点である。 (I)今年度はまず、海外長期滞在者(ビジネスパーソン)の異文化適応についての文献収集を行った。多くの文献では、異文化適応に大きな影響を与える要因として次のような側面が指摘されていた:(1)性格‐‐柔軟性、協調性のある者は海外で適応しやすい、(2)言葉‐‐現地の言葉が話せる者は話せない者より適応しやすい、(3)海外滞在の経験の有無、(4)年齢‐‐老年の者は適応が困難、また子供も適応が難しい者が多い、(5)専門知識‐‐本社から海外に派遣されるビジネスマンには、職務遂行能力などが必要、(6)異文化適応能力‐‐人間として互いに尊重しあい、文化の違いを理解できる能力は必須。 (II)次いで本年度は、これらの要因が果たして異文化適応に重要な影響を及ぼすのかを調査するため(平成5年度に調査開始)の質問紙を作成した(質問紙は添付)。 (III)さらに本年は、すでに調査を開始している研究「日本企業で働く在日外国人の抱える問題」(一般研究A、代表者:岡並木)のデータを用いて社会心理学観点からの分析を試みた。これは、来年度に調査を開始する「在日外資系企業にみられる派遣社員・家族の異文化適応」で収集されるデータと比較するためである。分析結果から以下の点が明確になった:(1)アジア系外国人は欧米系外国人より日本語能力がはるかに上である、(2)欧米系外国人は日本語ができないにも関わらず、日本人との接触がアジア系より大、(3)欧米系とアジア系外国人の大きな違いは、日本語能力だけでなく、日本人・日本社会との接触方法であった。欧米系は、スポーツや食事を共にする機会が多いのに比べ、アジア系は日本の新聞・雑誌を読む機会が欧米系よりはるかに多い。
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