本研究は、日本に滞在する外国人を対象に、日本企業で働く際の対人コミュニケーション上の問題点を明確にすることを目的として行われた。研究の理論的枠組みとしてスキーマ理論を用いるとともに、スキーマ理論に基づいた文化スキーマ分析法(cultural schema analysis)を開発し、調査の分析法として用いた。理論的枠組みとして用いたスキーマ理論については、「A Cognitive Approach to Intercultural Communication based on Schema Theory」にまとめた。また、文化スキーマ分析法については「Cultural Schema Analysis : A Cognitive Approach to Intercultural Communication」にまとめた。さらに、これらの理論、分析方法に基づいて以下の調査を実施した--(1)日本企業に勤務する日本人社員50名と外国人社員183名(19カ国)を対象に調査を実施し、「日本企業における日本人社員と外国人社員の共存の可能性」にまとめた。(2)日本企業に勤務する日本人社員25名、ブラジル人社員43名に対して調査を実施し「日本企業で働くブラジル人の就労実態調査--日系ブラジル人を中心に」にまとめた。(3)日本企業で働く日本人社員14名、中国人社員3名から得た回答を「日本企業で働く中国人の異文化間コミュニケーション実態調査」にまとめた。これらの調査では、文化背景の異なる人々の間のコミュニケーション上の問題を、異なった認知システム(スキーマ)の違いととらえ、さまざまな状況における人間行動ルールの文化的相違を明確にすることを目的とした。調査結果から、それぞれの文化特有の行動ルールについてのデータが得られ、スキーマ理論の観点から異文化間コミュニケーション上の問題点を明確にしていくことの意義が立証された。
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