本研究では、いわゆる情報文化を比較分析するための調査技術を開発するために、機械翻訳の応用可能性を吟味してみた。文化を社会学的に分析するとき、分野としては文化社会学を想定し、その中でも最も重要な内容分析に焦点を当ててみた。また、分析対象としては、ポピュラー音楽を題材にし、日本語から英語、逆に、英語から日本語、の双方向から、機械翻訳がどの程度応用できるのかを試してみた。もしこの分野に応用できれば、内容分析の作業が画期的に短縮でき、分析が進むことが考えられた。 結論は、英語から日本語に関しては、ある程度実用的に使用可能であり、日本語から英語については実用段階にないというものであった。つまり、前者はある程度後処理をすれば使え、後者は、今のところそのままでは使えないということを意味する。だからといって、この結論に悲観すべきではない。内容分析の作業は、人間の情報処理にとって極めて高度な内容を持ち、中期的・長期的に応用可能性が認められることが明らかになったことだけでも十分に意味のある結果といえるであろう。 また、報告書では、これ以外に、文化社会学に機械翻訳を導入することを方法論的に考察しただけでなく、理論的にも検討してみた。もちろん、安易に導入を善として前提することは間違いである。しかし、批判的かつ創造的な検討が必要であり、本研究では、この立場に立ち、研究を行った。いづれにしろ、このような新しい情報処理技術の、社会学への応用は始まったばかりであり、今後さらに深く研究する必要性があることははっきりとしたように思われる。
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