1.大都市市街地再開発が市街地(都心、インナーエリア)居住との関連において「外発型クリヤランス」から「内発型再生」へとモデル・シフトしてきていることは、日本を含め世界的な動向であるがこのことを再開発関連の調査研究資料、現地ヒヤリング(平成4・5年度の分担者・水上徹男担当)を通じて確認した。 2.大都市インナーエリアを磁場とした地域社会の衰退・空洞化と再組織化の契機に国境をこえたニューカマ-ズとしてのアジア系外国人の定住化の問題がある。大都市インナーエリアとして、東京・池袋・新宿その他の実態調査を通じて地域社会再編成と統合化の過程から、かれの生き方、都市的適応様式、共生の作法をキーワードに実態調査を進めてきた。 3.同時にオールド・セットラ-ズとしての在日韓国・朝鮮人・中国人居住者調査を東京・荒川日暮里地区、大阪市生野区、神戸市中国人街区その他について資料収集に努めたが、私たちの提出したエスニック・コミュニティの分析枠組と、この枠組を通した実態を基層とした再開発モデルの提示は必ずしも有効ではなかった。むしろ、平成6年度の研究総括では「都市的世界・コミュニティ・エスニシティ」の三層構造をモデルとする大都市インナーエリアの実証分析に視点を合わしていること、個別特殊状況に特徴づけられるエスニック・コミュニティの独自の類型化と分析枠組よりも、より普遍のモデル構成において「都市的世界・コミュニティ・エスニシティ」の三層構造の分析と地域社会相互の比較検討に携わるほうが有益である。 このことは、共同課題としての従来の同化・融合モデルから共生・統合モデルへの適応様式の変化、あるいは社会教育プログラムの多民族・多文化教育の新動向の中にも、くみとれる(平成4年度の分担者・岡本包治担当). 4.市街地再開発の歴史的、文化的シンボルとしての「外国人居留地」の保全策も、特定の街区指定による歴史的建築物、町並み景観の施設・装置中心プログラムが居住、コミュニティ再生との繋がりを欠いたとき、それが絵に画いた餅であることが本研究の最終年度の阪神大震災による「外国人居留地」の決定的破壊の様相からも裏づけられた。 5.同時に、地道な地域社会再生、住民の自己組織力とネットワーク形成による市街地居住の可能性を問うた神戸市長田区真野地区、大阪市西区川口地区が、私たちに有益な指針と資料を提供した。本課題研究は平成6年度をもって一応のピリオドとするが、まさに現在進行形の地域社会の自己変容過程と市街地再生の可能性を、各地の典型事例を中心として今後とも調査研究を継続していきたい。
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