本年度は、研究期間の中間年であり、社会調査の実施に全力を尽くした。調査対象地として、山梨県三富村と同県竜王町を選定し、高齢化の問題に関する意識と実態の調査を実施した。三富村は東京に比較的近いところに位置する過疎地域である。山梨県の過疎町村の中で過疎化がとくに深刻というわけではないが、今回ここを対象地に選んだ第一の理由は、昨年度調査した埼玉県大滝村と山を隔てて隣接している点にある。両村を走る国道140号線は、上って行くと秩父連山で行き止まりとなっているが、近い将来「雁坂トンネル」が貫通し、両村、というよりも両県を結ぶ主要な幹線になることが予定されており、これによる地域社会の大きな変化が予想され、この点に興味を惹かれたからに他ならない。また、竜王町を対象地に選んだのは、過疎地域と比較対照するためである。竜王町は、町制でありながら、人口3万6千人を越え、主として甲府市や近隣の商工業地域のベッドタウンとして今や山梨県第三の都市に発展している。地方における急速な変貌を遂げつつある都市的地域として、好例ではないかと考えた。三富村のサンプル数は434票、竜王町は510票であり、回収率は7割を越えた。 集計・分析作業は、現在進行中である。仮説検証的というよりは実態把握的な意味が強い調査であるが、高齢者にとって過疎地域の住み易さと住み難さを整理するとともに、高齢者にとって幸福な生活の条件とは何なのか、という基本的な問題意義に関して、何らかの知見を見出したいと考える。 また、本年度は過疎地域の類型化も目標の一つであったが、文献や資料の収集が資金不足もあり思うように行かなかったこと、調査に膨大な時間を費やしたため時間が不足したこと、さらに研究分担者の間でもっと議論を深める必要がある等々の理由から果たせなかった。次年度も継続して検討することにしたい。
|