本研究では、対象を首都圏に絞り、とくに、東京都および東京隣接諸県の中から過疎町村を選び、調査を実施した。首都圏を対象にした理由は、一般に過疎地域というと、大都市から比較的遠方にある地域というイメージが強く、大都市周辺部のそれが見落とされやすいので、こうした研究の間隙を埋めるためである。 調査は、生活の4側面について行われた。すなわち、(1)経済(産業、労働)、(2)地域(地域活動への参加)、(3)家族・親族(構造、機能、ネットワーク)、および(4)狭義の生活(メディア、交通、買い物etc.)である。 (1)若い人々の働く場、地域産業の後継者、生産性、所得水準、地域産業振興、産業誘致の場合の地元と外部資本の対立などに関して、諸問題が見出される。 (2)都市部と較べればかなり活発な活動が展開されているが、とはいえ、高齢者や情報化の波によって、徐々に地域連帯もゆるみ、伝統的な祭りや行事は簡略化され、生活は個人化している。 (3)若年人口の流出による世帯規模の縮小と老人のみ世帯の増加に伴い、老人世帯の経済問題と健康、医療、介護の問題がクローズアップされている。また、別居親子間のネットワーク形成の問題も、これに加わる。 (4)道路は整備され、通勤・通学・買い物など、生活の利便性は良くなった。しかし、反面、このことは鉄道・バスの廃止といった事態を招き、マイカ-を持たない高齢者にとってはかえってマイナスに作用している面もある。また、地域における取得可能情報量は飛躍的に増大したが、接触する情報の質の問題は残されている。 なお、過疎地域の類型化に関しては不十分なので、今後の課題としたい。
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