研究実績の概要 本年度は、「生活史」の面接調査を実施した。調査対象は、筑豊に滞留するグループ、筑豊から、大阪、名古屋、東京に広域移動したグループである。 旧産炭地滞留層の面接事例は5ケースを数える。それぞれ労働組合活動家、町会議員、坑夫の妻、炭坑記録者と多用な人々の労働・生活史をヒヤリングする事ができた。また、移動層では8ケースを数える。神奈川の自動車産業への集団就職者への集団面接をはじめとして、炭労専従者、離職者世話人等のケースについて、滞留層と同様の個人記録を収集することができた。 滞留層、移動層の各事例は面接者によって文章化され、若干のコメントを加えて中間報告書として作成した。時間的な制限もあって、充分な事例検討は今後の課題とせざるを得ない。 なお、移動層のネットワーク、旧産炭地の企業誘致による再生の動向についても継続して資料を収集することができた。さらに、離職者自身が記述する「自分史」を本研究に寄稿されたことは、事例の充実とともに生活史研究方法の深化の上でも貴重なものとなったことを付記しておきたい。
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