本研究における問題意識は、地域の発展、統合にたいして神社がどのような機能を果たしてきたか、である。このテーマを理論的・実証的に分析するために最も参考になる事例を検討した結果、本研究は調査対象として北海道の神社を選定した。また、さらに、北海道内の神社の成立、発展過程についての実態を把握し、研究の枠組および種々の研究条件を検討した結果、北海道内の神社のなかでも特に、いわゆる「屯田兵村神社」に焦点をあわせることに決定した。そして、これまで現地調査を中心に「屯田兵村神社」の現状分析調査をおこなってきたものである。 「屯田兵村神社」は、明治の北海道開拓のなかで、37の屯田兵村の成立、発展過程とともに設立された。それぞれの神社の成立、発展過程をみると、明治以降、現在にいたるまでの変化は、かなり複雑であるが、現在でもなお屯田兵村とほぼ同数存在している。それら「屯田兵村神社」の多くが、現在なお地域とのつながりを強くもち、地域の人々の心の支えとなっていること、さまざまなかたちで地域社会に貢献していること、そして地域統合のシンボルとして機能している実態を確認することができた。この点を具体的に「研究成果報告書」において提示した。 なお、そうした「屯田兵村神社」が、たとえば北海道内の神社のなかでも「士族移住神社」と比べた場合、神社の機能のちがいはどうかといった問題については、さらにさまざまな検討を加える必要があり、今後検討したい課題である。
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