研究概要 |
研究代表者・分担者ともにそれぞれの研究に従事しており,その成果を数度にわたって相互に報告し合った。 代表者としては,ポーランド教会の成立の状況の検討に着手しており,次の二点に関し若干の知見をえた。第一に,当時の国際環境が重要な意味をもったことである。すなわちミェシコ一世は国内の政治・イデオロギー的統一を促進する必要にせまられてキリスト教を導入したが,その際彼はローマ教皇庁,神聖ローマ帝国,およびすでにキリスト教を受けいれていたボヘミアとのバランスのとれた関係に配慮せざるをえなかったということである。第二に,ポーランドにおけるキリスト教化は,王権により上から行われたという意味でロシア等の場合と類似性を示すが,その目的という点でも同様のことが言える。すなわちポーランドのキリスト教化には,国内のイデオロギー的統一という上述の目的のほかに,これによって西方のとくにドイツ人勢力から異教徒(ポーランド人)討伐のための口実を奪い,なおかつポーランドの文明化をはかるという目的もあったのである。その意味でポーランド教会の成立をめぐる問題は,西欧諸国の場合との比較を行う一方で,ロシア等東欧諸国全体のキリスト教化のプロセスとの比較を進めながら考察する必要性があるということである。 分担者の研究については,中世イングランドにおける聖職者の役割についての研究に進展があった。すなわち東出は,イングランドにおける教皇直属官僚の実態を検討しつつ,教皇権とイングランド王権との関係の具体的様相を明らかにした。
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