研究課題/領域番号 |
04451078
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川北 稔 大阪大学, 文学部, 教授 (70107118)
|
研究分担者 |
藤本 和貴夫 大阪大学, 言語文化部, 教授 (70029734)
堀井 敏夫 大阪大学, 教養部, 教授 (90025049)
江川 温 大阪大学, 文学部, 助教授 (80127191)
合阪 學 大阪大学, 文学部, 教授 (50027976)
|
キーワード | 食糧 / 食品 / 砂糖 / 紅茶 / パン / 世界システム / 穀物法 / イギリス風朝食 |
研究概要 |
本年度は、食糧や食品そのものの問題から、食生活をめぐる生活文化の問題に関心を広めた。12月には、外部から講師(大阪国際大学助教授、南直人氏)を招いて、主にドイツ史の立場から、研究発表をお願いした。 従来は、分担研究者の専門範囲を反映するかたちで、総合的な検討を加えてきたが、成果の集約を求められている次年度にむけて、結局、イギリス産業革命期の社会変容と食生活史の関係に、焦点を絞りこんでいくことに、全体の方向性をもとめることにした。他の分野についての知見については、これとの対比で活用していくことにした。 イギリス産業革命期には、都市化に伴って、燃料自給の手段を断たれ、住宅事情からして調理の困難な立場におかれた民衆の食生活、とくにその朝食は一変した。すなわち、茶と砂糖、店買いのパン、ジャガイモ、オートミールといった「イギリス風朝食」が成立した。これらの食品の多くは、17・18世紀にイギリスが帝国化したことによって-「イギリス商業革命」のプロセスをつうじて-、イギリスにもたらされたのであった。ところが、19世紀になって、この国が「世界システム」のヘゲモニーをにぎるようになると、むしろフリー・トレイドによって、より安価に確保されるようになった。 「ジェントルマン資本主義」論を提唱しているケインとホプキンズによれば、1850年以前のイギリス帝国主義は、本質的に「ジェントルマンのステイタス・シンボルとしての植民地物産の確保」を目的とする、輸入主導型の経済体位に支えられていた。このプロセスは、すなわち、植民地物産の消費が大衆化していくプロセスでもあり、食事にかんしていえば、「イギリス風朝食」の成立するプロセスであった。しかし、新しい食習慣が、民衆レヴェルで決定的に確立すると、それを安価に維持することが不可欠となったわけで、穀物法の廃止、東インド会社の特権廃止、奴隷制度の廃止、砂糖関税の引下げなど、一連の政策が展開することになる。
|