研究課題/領域番号 |
04451078
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川北 稔 大阪大学, 文学部, 教授 (70107118)
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研究分担者 |
藤本 和貴夫 大阪大学, 言語文化部, 教授 (70029734)
堀井 敏夫 大阪大学, 文学部, 教授 (90025049)
江川 あつし 大阪大学, 文学部, 助教授 (80127191)
合阪 學 大阪大学, 文学部, 教授 (50027976)
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キーワード | 紅茶 / ステイタス・シンボル / ポテト / 牛乳 / 身長 / 都市化 / 産業革命 |
研究概要 |
本年度は、最終年度であるため、いちおうの結論というべきものを抽出することをめざした。そのために、初年度に検討した二つの方法論-個々の食品を取り上げる方法と、特定の社会のなかの食生活を問題にする方法-を統合する意味で、対象を社会変動の激しかったイギリス産業革命期に絞り、個別食品として、紅茶と砂糖、ポテト、牛乳を取り上げて検討した。さらに、これらの食品の導入が、逆に社会に与えたインパクトのひとつを、当時の民衆の「身長」を基準として測定することにした。上・中流階級のステイタス・シンボルとして広がった「砂糖入り紅茶」は、都市化が進行するにつれて、都市労働者の象徴記号と化した。他方、「貧民の食品」とみられたポテトも、基礎的な食品として、逆に北部からひろく広まった。しかし、これらの食品はいかに都市労働者の生活に適合的であったにしろ、栄養学的には、はなはだ問題があり、イギリス人の平均身長を押し下げた。とくに、職を失いつつあった農村女性のそれは、激しく低下した。その限りでは、今回の研究の結果では、少なくとも1860年代までは、産業革命期のいわゆる「生活水準論争」にかんして、悲観説派に有利な結論ということになろう。1840年代・50年代のアイルランドにおける「ポテト飢饉」の影響と、60年代イギリスにおける牛疫は、イギリス人の食生活の近代化に決定的な役割を果した。とくに、後者は、ロンドンなどの大都会における牛乳の流通機構を合理化させる結果になり、その結果、牛乳は19世紀を通じて価格が安定したうえ、衛生面も画期的に改善された。
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