研究課題/領域番号 |
04451078
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
西洋史
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川北 稔 大阪大学, 文学部, 教授 (70107118)
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研究分担者 |
藤本 和貴夫 大阪大学, 言語文化部, 教授 (70029734)
堀井 敏夫 大阪大学, 文学部, 教授 (90025049)
江川 温 大阪大学, 文学部, 助教授 (80127191)
合阪 學 大阪大学, 文学部, 教授 (50027976)
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研究期間 (年度) |
1992 – 1994
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キーワード | 紅茶 / ステイタス・シンボル / ポテト / 牛乳 / 身長 / 歴史人類学 / 工業化 / 都市化 |
研究概要 |
本年度は、過去2年間の総合的な資料の蒐集・分析の成果をふまえ、予定通り、具体的な対象をイギリス産業革命時代の前後に絞って検討し、一定の結論をえることをめざした。そのために、次の四つの視角からアプローチし、それぞれに小括することにした。すなわち、(1)ステイタス・シンボルとしての食生活、(2)実質的なカロリー補給としての食生活、(3)栄養学的にみた食生活、(4)食生活の結果としての身体性の問題がそれである。これらの視角から産業革命期の食生活をみる場合、もっとも重要な背景は、当然、工業化と都市化ということになる。(1)の問題では、紅茶と砂糖の消費を中心に、「イギリス風朝食」の成立を検討したが、その結果、それらが中産層のステイタス・シンボルから、都市労働者の不可欠な食品となっていったことが明らかになり、後者の象徴記号と化したことがわかった。これに対して、(2)の問題では、ポテトの消費をとりあげ、これがアイルランドをはじめとするケルト辺境やイングランド北部の人口(二次産業革命の労働力)維持に決定的な役割を果たしたことを論証した。(3)については、紅茶食とポテト食で決定的に欠落する栄養分の摂取状態を考えるために、とくにロンドンにおける牛乳の問題をとりあげた。最後に、(4)では、都市化と食生活の変化に伴う身体の変化をみるために、身長にかんする近年の歴史人類学の成果をサ-ヴェイした。家族の内部での栄養摂取状況の変化をみるうえでも、都市化の影響をみるうえでも、この方法はかなりの期待がもてることが判明した。結論的にいえば、以上の四点をとおして、イギリスの食生活は、1860年代をもって、いちおう近代的な形態をとるに至ったものと思われる。
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