研究課題
一般研究(B)
(1)中国明清期文人の文集出版とその和刻本に関する書誌学的研究として、長沢規矩也『和刻本漢籍目録』(昭和51年、汲古書院。補正本は昭和55年)がある。また明清期文人文集和刻本の影印出版として、汲古書院の『和刻本漢詩集成』『和刻本漢籍随筆集』『和刻本漢籍文集』等の一連の特筆すべき大事業がある。(2)本研究では、以上の出版情況にかんがみ、上記の研究課題に関する基礎研究の一環として、特に袁枚の詩文集とその和刻本についての研究を重点的に進める事にした。袁枚は清朝中国の代表的な文人の一人であり、文学サロン随園を中心として多くの文人と交遊した。その著『小倉山房詩文集』は、同時代の日本江戸期の代表的文人である市河寛斎の『随園詩鈔』によって日本に紹介され、その主張する“性霊"の文学主張と共に、我が国の詩壇に大きな影響を与えた。それは、曽ての平安時代における自楽天『白氏文集』の影響にも似て、甚大なものがあった。本研究では、その日本への影響の仕方を探る為に、『随園詩鈔』における『小倉山房詩文集』の縮約の法則を調査しようとした。以て、日本文学の中国文学受容のあり方を模索しようとするものである。(3)さらに、関連する研究作業として、袁枚のサロンに出入した文人の動態についての詳細なデータを得るために、『袁枚全集』に見える人名の索引をまとめた。これは既存のパソコンを使い、作業を分担して行なった。人名難字の処理等、まだ難点を残すが、この索引によって袁枚の交友した人名がデータ的に明らかになり、袁枚の詩文研究に資するだけでなく、そのサロンのあり方や、日本江戸期の文人市河寛斎及びその江湖派文人との比較研究にも大いに寄与するはずである。(4)なお、研究分担者の個別研究は別個に進行し、それぞれ雑誌等に発表したほか、研究成果としての論文集を小冊子にまとめた。
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