研究課題
一般研究(B)
在日外国人と日本人の日常的接触において、言語そのもの、あるいは言語行動の諸側面での理解の行き違いが見られた場合、それを事例として採択し、そのような事例が生まれるに至った経緯、および事例の内容をでき得るかぎり詳細な枠組みにそって記述することが本研究の第一の目的である。その記述を土台にして言語社会における「誤解のメカニズム」を分析・解明する方法論を仮説として提案することが第二の目的として掲げられる。さらに、日本語母語話者・非母語話者双方の観点を比較対照し、誤解発生を予測できるような方法論を確立することが第三の目的となるであろう。その先には研究結果を応用しての誤解発生予防のための方策が考えられなければならないのは言うまでもない。本研究はそのような目標に向けての第一歩を踏み出すものである。第一の目的を果たすための事例収集は、各研究分担者の担当ごとに英語・タイ語・朝鮮語・フランス語・ポルトガル語各母語話者について行った。事例に言及している文献からの収録のほか、各母語話者への面接聞き取り調査、事例自己申告記録依頼による調査などが収集の主たる手段であった。事例記述の参考に用いたのは、「言語行動のエスノロジー」とも言うべきいくつかの社会言語学における先行研究の枠組みである。特に「誤解をもたらしたことがら」、「誤解されたことがら」の構成要素にそれが顕著に見られる。その分析の枠組みは杉戸によってデータベース・ソフト「桐」上に構築され、各分担者が得た事例はそれにそってデータベース化された。その過程において各分担者から分析の枠組みに関する問題点がいくつか指摘された。それらを検討し、事例をより正確に記述するために修正を行うことが何度か繰り返された。最終的には各言語担当者によって収集された誤解の事例は統合されたデータ・ベースとして完成をみている。これは上記第一の目的にかなうものである。本研究はさらに第二・第三の目的にむけて再出発する計画である。
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