「外貨」の法的取扱について研究を進めてゆく過程で、国際私法上の問題を取扱う前提たる、わが民(商)法上の問題が、未整理のまま如何に放置されているかを痛感した。そこで、(1)インターバンク取引、とりわけスワップ・オプション取引においては、取引される通貨は(それが円であっても)「モノ」であって「カネ(money)」ではないとする大蔵省国際金融局の研究会報告書を、まずもって批判することとした。企業の倒産に際し、ひとり銀行のみが、配当によることなく「取戻権」を全額について行使しうる、などという銀行にのみ有利な解釈論(金銭債務性を否定することから導かれる)は、否定されねばならない。その上で(2)わが民法上、不法行為請求を行いえないとされる外貨建ての請求-そのテーゼを確立したとされる、ある大審院判決を論破し、契約上の請求に関するものとされる民法403条に関する昭和50年の最高裁判決との整合性確保(とくに換算時点の問題が大きい)のための提言を行うこととした。そして、(3)損害賠償につき、いかなる通貨建てでそれが本来なされるべきかという、「損害通貨」の考え方を提唱し、債権者に過不足なくその「損害」を填補させる上での「通貨」の選択(損害の金銭時評価は、その通貨建てでなされることになる)と、円換算の際の基準時点(Payment date rule)について論じた。(引き続き、国際金融倒産の場合につき、研究成果を本年中に公表する予定。)400字×約160枚の論文を「貿易と関税」の私の連載に公表することとした。
|