本研究は、平成4年度からの継続であり、経済情報の疎通によって個別経済主体間の協業・調整を高度化するためのシステムの構築と、同システムが供給するサービスの経済学的意義・政策含意の検討を目的とする。具体的には、最近における企業間取引の急速な「情報化」(Electronic Data Interchange、EDIの普及)に着目し、電子的にサンプリングされた企業間取引情報に基づいて構築される「経済情報システム(仮称)」について考察した。新しい情報技術を利用する同システムが公的資金によって広く利用可能になれば、個別経済主体が入手できる他主体、産業、マクロ経済に関する情報の大幅増大、不確実性・リスク・不均衡の減少、国全体の経済活動の格段の効率化が実現できるものと期待される。他方、この種のシステムのサービスは公共財的要因を含むので、同サービスを供給する「経済情報産業(仮称、現在萌芽状態にある)」における競争・独占・規制などの制度・政策面の問題をも考察した。 (1)EDIの調査--データベース検索および資料・文献による調査をおこなった。 (2)「経済情報システム」の予備的な設計--(a)同システムにおける情報の流れ、すなわち標本採取、情報の加工・組織化、およびその利用・供与方式の指定、サービス価格の決定方式、(b)同システムの実現に必要なハードウェアおよびソフトウェアの機能の概略の指定、(c)同システムの建設および運用費用の概略の試算。 (3)「経済情報システム」の建設にともなう問題点および近い将来において実行必要と考えられる政策課題の特定--(a)この種のシステムを不用意に導入した場合に生ずる不安定性(たとえば証券市場のプログラム取引)の可能性やそれが起きる条件、(b)同システムによって採取・作成される情報と企業秘密、同プライバシーの関係、(c)同情報の所有・使用・加工等に関する権利面の問題、(d)バイアスの小さい標本採取をおこなうための条件、(e)同システムを当初試行的に建設し、それを漸次拡大してゆくときに生ずる標本化の問題、(f)公共システムと民間システムが併存する場合に生ずる問題など。
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