研究課題
近年、西太平洋地域の諸国は急速な経済成長を遂げているが、それはいわゆる輸出志向工業化政策の成功に起因するといわれてきた。しかし、輸出志向工業化も実は中間財・資本財の輸入代替を随伴しており、また勤労者所得水準の上昇が最終消費財国内市場を拡大しつつある。さらに、国内貯蓄率の向上が国内資金循環を形成しはじめてもいる。このように、当該地域の経済発展にとって国内市場条件は決して軽視しうるものではなくなりつつある。本研究では、西太平洋地域のうちで4カ国(日本・韓国・タイ・中国)を取り上げて、国内市場条件の中でもとりわけ当該国農村における商品・労働力・資本等の市場形成に注目して、それと経済発展との相互関連性を比較検討するとともに、国内農村市場を持たないシンガポールの事例も併せて比較した。本年度は、研究分担者が各自の研究対象国の農村市場の展開過程に関する分析を行い、月に1回程度研究会を開いてその成果を報告し合った。さらに全体討論を行って報告書作成の準備とした。それらの討論を通じて、高度成長期の日本と同様に、韓国・タイ・中国でも国内農村が国内産工業製品の販売市場として重要な役割を果たしてきた(あるいは果たしつつある)ことが確認された。今後は、当初の計画に比べて充分には作業が進んでいない農村の労働力・資本市場の分析を引続き行う予定である。