本年度における主要な目標は、パーソナル・コンピューターを11台接続し、経済実験に使用できるネットワークを構築することである。パーソナル・コンピューターの価格下落に伴い、発注を見合わせていたが、平成5年、1月から2月にかけて機材が到着し、現在、セットアップの最終段階に入っている。 今年度は、社会資本整備の財源調達に関する実験を2つ行った。公共目的の施設等を建設する際に、社会の成員から寄付を募るとする場合、成員の間でのコミュニケーションが、寄付の総額にどのような影響を与えるのかについて、コミュニケーションが社会の成員の全員で行われる場合と、ローカルにしかコミュニケーションが行われない場合の実験である。 社会の成員が一同に会する場合として、6人の被験者を用い、話合いを認めると、いわゆる囚人のディレンマ的状況は発生せず、パレート最適な帰結、すなわち、望ましい公共財が供給できる水準まで寄付が集まるということを確認している。 社会の成員が一同に会して話し合いを行うというのは現実的ではない。コミュニケーションがローカルな場合として、概念的に6人の被験者が輪の上に乗っているとし、両隣と話合いを認める場合と、6人を2人1組の3つのグループにわけて、そのグループの中でのコミュニケーションを認める場合を検討した。コミュニケーションのネットワークがある場合、すなわち前者の場合が後者の場合と比べて寄付額が、パレート最適からは程遠いとはいえ、著しく増えるという事実を観測した。このことは、各自治体ないしは意思決定のユニットが単独に意思決定をするよりも、ユニット同士のコミュニケーションを密にした方が、望ましい水準に近付くことを示している。
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