社会資本整備の財源調達と支出分析:実験経済学によるアプローチ

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04451111
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 西條 辰義 筑波大学, 社会工学系, 助教授 (20205628)
• 研究分担者: ターングル スティーヴェ 筑波大学, 社会工学系, 講師 (90240621)
• キーワード: 制限付き一般競争入札 / 所得分配の正義 / 無知のヴェール / 実験経済学 / 談合

研究概要

(1)制限付き一般競争入札。引き続き制限付き一般競争入札の実験を実施した。昨年の実験では、制限付き一般競争入札の導入に伴い、(a)入札者の人数が増加(3人から12人)、(b)競争力のある業者の参加、および(c)ペナルティがかかる可能性、の効果を観察したが、各々単独では落札価格を下げることには貢献しないこと、しかしながら受注調整の方法には変化が生じることが判明した。今年度は、(d)談合に参加しないアウトサイダー、(e)落札できない業者に回収できない費用がかかる場合、の効果を分析している。アウトサイダーが存在する場合には、話し合いを認めても話し合いがなされない場合があった。また落札価格が大幅に下がった。費用に関する効果も価格を低下させるのに寄与していることが判明し、この両者の効果が重なると競争価格に近いところで落札価格が決定されることを観察した。以上により、また制限付き一般競争入札では、運用の仕方により効果が異なることを検証した。
(2)所得分配の正義実験。所得分配の規範的な原理とみなされている様々な原理のうちどの原理を人々が選択するのかを実験を用いて調査した。原理として、ロールズの原理、ハ-サニの原理、最低所得を保証する原理(ホウ=ローマ-の原理)、最高と最低の差を決める原理の4つの原理を準備し、人工的に実験室の中で「無知のヴェール」を作りだし、5人の被験者にその中で全員一致で一つの原理を選択して貰った。10組のうち6組が最低所得を保証する原理を選択した。これは、フローリック=オッペンハイマーの実験結果とほぼ同じであった。
(3)理論研究。公的調達において、規制当局は、被規制者の技術能力が十分に観察可能ではない問題(アドバース・セレクション)とともに被規制者の行為が容易に観察できない問題(モラル・ハザード)に直面している。このように二重の意味で規制の効果を弱めてしまう環境のもとで、規制当局が持ちうる被規制者の技術分布に関する定義に関する基本的な結果を得ている。
国際競争力のある実験経済学研究の拠点を日本に作ることも我々の目標のひとつであった。短期間ではあったが研究発表の諸論文が示すように、日本における国際競争力のある本格的な実験経済学研究の立ち上げに成功したと自負している。

研究成果

• [文献書誌] Saijo,Une & Yamaguchi: "'Dango'Experimeuts" Journal of the Japanese and International Economics. (fathcaning).
• [文献書誌] Ito,Saijo,Une: "The Tragedy of the Commons Revisited" Journal of Economic Behaviar and Ovganization. (futhcaning).
• [文献書誌] Saijo & Nakamura: "The 'Spitc'Dilemma in Voluntany Cntributin Experiments" Journal of Cnflict Resolution. (fathcaning).
• [文献書誌] Une and Saijo: "Ou the Definitlm of Favorableness" Economics Letters. (fnthcaning).
• [文献書誌] Saijo,Tatamitani & Yamato: "Towand Natwal Inplementatim" International Economic Review. (futhcaning).
• [文献書誌] 西條辰義: "厚生経済学における基本定理:新しいパースペクティブ" 経済研究. 46. 11-21 (1995)
• [文献書誌] 石井・西條・塩沢: "入門・ミクロ経済学" 有斐閣(1995/4に出版予定), (1995)