我々の研究成果には実験研究と理論研究とがある。実験研究は、社会資本整備の支出の方法として検討の余地のある競争入札制度、公共財供給における財源調達、社会資本が「共有地」としての性格を持つためにおこる非効率性(悲劇)、所得分配の公正性の4つのテーマを取り扱っている。入札制度については、指名競争入札の非効率性を実証し、また制限付き一般競争入札では、価格を競争価格に近づける要素とそうでない要素を発見している。被験者間の話し合いを認めるかぎり、入札者の数の増大は受注調整の方法に影響を与えるが、落札価格は競争価格から離れ予定価格に近くなる。話し合いに参加できない被験者を1名設けると、この被験者を除いて話し合いを認めても、話し合いがなされない場合が起こり、話し合いをしてもしなくても落札価格が競争価格に近づくことを観察している。公共財供給に関しては、様々なメカニズムの性能を被験者を用いて確認する作業がなされており、理論で想定している結果とは大幅に異なる結果を得ている。共有地実験においてはナッシュ均衡が予測するよりもさらに悲劇が進むという観察をもとに、利得を最大にするのではなく、「利己の利得のシェアを最大にする原理」と「他との差を最大にする原理」を得ている。分配の公平性実験は、所得分配の規範的な原理とみなされている様々な原理のうちどの原理を人々が選択するのかを実験を用いた実証分析である。 理論研究は、公共財供給における財源調達を扱う自発的寄付メカニズム、わかりやすい社会制度設計の問題、公共調達における規制者が被規制者の技術パラメータに関していだく分布の定義、厚生経済学における基本定理、合理性が限られた状況での意思決定の問題の5つのテーマを取り扱っている。なお、もう少し詳しい要約が「研究成果報告書」にあるのでそちらも参照されたい。
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