本年度の研究成果は、次の二つの内容にまとめられる。 まず、ウオーターフロント開発における、軌道系交通の計画上の扱い方を、近代史の中で位置づけておく必要から、「ウオーターフロントの景観計画に関する基礎的研究」がなされた。この研究では、川崎市の京浜工業地帯の開発史を、主として鶴見地区の埋立事業を中心に調査した。その結果、昭和初期の臨海都市開発における産業、生活、レクリエーションなどの複合的な機能の接合に際して、鉄道路線が果したパブリックアクセス上の機能的役割、ならびに都市イメージ形成上の役割を記述することができた。さらに、開発地域内での水上交通との効果的な連係が、特に海水浴場の経営にあたって実行されたことも具体的に明らかにしている。 また、特にウオーターフロントに立地する高架鉄道路線について、車窓から得られるシーケンス景観を分析する方法論を確立することを目的とし、「高架鉄道の車窓景観の分析手法に関する研究」が行われた。この研究では、JR京葉線/東京モノレールの2つの路線と、比較対象としての中央線/埼京線など、合計6路線を対象に、車窓からのビデオ調査を実施した。その結果、都市における高架鉄道路線から得られる、連続的で広範囲な眺望景観の特性を数量的に評価する手法を提示することにより、以下の点を数量的に評価し、ウオーターフロントに立地する鉄道からの車窓景観の相対的な特徴を明らかにした。 1.遮蔽物、水面、緑地など視野占有要素の露出特性と、形態情報、文字情報からなる車窓景観の認識パターン 2.沿線土地利用の区画密度による、車窓景観の移り変わりの激しさの度合い 以上の研究の成果は、軌道系交通を活用した都市計画・設計に有用な知見を提供できるものと期待される。
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