研究概要 |
1.高次思考育成のための数学カリキュラム開発と教材のデータベース化 (1)数学の「よさ」を感得させるカリキュラムの開発:中学校1年次「文字と式」の単元を対象に,文字式の「よさ」の分析を行い,数学学習における高次スキーマの獲得を支援するカリキュラムの開発を行った。 (2)帰納的学習モデルを組み込んだ電子テキストの拡張と課題特性の分析:昨年度に帰納的な指導モデルの設計を行い,実現した「電子テキスト」をさらに改良するため,高次思考能力問題の課題特性分析を中心に行った。分析の結果に基づき,課題の電子テキスト化を図った。 2.高次思考能力の育成を図る授業実践と児童生徒の高次思考能力の形成過程の実証的分析 (1)文字式の「よさ」を感得させる授業実践:文字式のよさの感得を目的としたカリキュラムに基づいて,授業実践を行い,「よさ」の形成過程の分析を行った。その結果,(1)伝統的な方法による指導群よりも,よさ指導群の方が高い割合で文字式の意義を理解していること,(2)よさ指導群においても,3ヵ月後によさの理解を保持している群と,そうでない群とに分かれること,が明らかになった。 (2)課題特性に基づく生徒の高次思考能力の分析:数学的変換,パターンファインディングの2つの課題における,生徒の高次思考能力の分析を行った。その結果,(1)高次思考課題においても,標準課題においても,ポイントとなる推論には差が認められないこと,(2)高次思考を意図した課題も単純な方略(帰納的解法)によって解決する生徒の割合が高い,という2点が明らかになった。これは今後の高次思考能力育成のための教材開発に対する具体的な示唆となるものである。
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