本研究は、知能障害児(精神遅滞児及び学習障害児)の脳機能状態について多面的・多水準的に検討し、彼らを脳機能障害のタイプ(知能障害の構造的差異)に基づくグルーピングを試み、上記の検討により得られた結果と具体的な教科指導(国語及び算数)において有効な援助方法との関連を検討することで、障害の性質に見合った教科教育指導法を開発することを目的としている。今年度は、実験を依頼している学校及び施設側の事情により、当初予定していた4種の測定を同一被験児に対して連続して実施することが困難であった。そのため、現段階では4種の測定をいくつかの学校や施設で別個に実施している状況であり、すべての測定結果を有機的に連関させた総合的な評価は得られていない。現在、右半球機能に問題が想定される児童と左半球機能に問題が想定される児童に対して主として算数の教科指導を試みているが、これらの児童が教科学習において示す困難は極めて複雑であることがわかった。それゆえ、教科学習において現れる具体的な困難については、心理学的レベルでの詳細な分析を行い、そのうえで他の4種の測定結果との関連を検討していく必要がある。なお、実際に児童・生徒の教科指導に当たっている教師は、児童・生徒の種々の行動・その他の特徴に基づいて指導内容の設定、指導法の工夫を行っていると思われる。今後、それらをアンケート調査等により把握する必要がある。
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