研究課題
本研究の目的は、銀河系の星間空間に存在する星間塵(固体微粒子)の熱放射遠赤外線を観測することにより、星間空間の構造を明らかにすることであった。従来の観測、例えば、IRAS衛星は遠赤外域で非常に高感度な観測を行ったが、波長が100ミクロン以下に限られていたため、星間塵の平均的温度(20K程度と考えられている)の放射のピークをカバーしていなかった。一方、本研究で開発した圧縮型Ge:Ga検出器アレイは、200ミクロンまで十分な感度があり、熱放射のピークを的確に捉えうるものである。さらに、この検出器アレイを用いた高効率の気球観測装置を製作し、平成6年9月に宇宙科学研究所三陸大気球観測所において観測を行った。その結果、銀河面の銀緯20度から45度の広い範囲にわたって観測ができ、データ解析の結果、中心波長160ミクロンの遠赤外強度マップが得られた。さらにこれとIRAS衛星の100ミクロンマップと組み合わせることにより、星間塵の温度分布、柱密度分布がえられた。これらのデータから得られた注目すべき特徴は、銀河星間塵の温度は個別の大規模星生成領域を除けばほぼ一定であるということである。この事実は星間空間におけるエネルギー発生源である「星」とこれを吸収し遠赤外線として再放出する「星間塵雲」の位置関係に、強い制限を課す。すなわち、温度変化がほとんど見られないということは、星と星間塵雲はお互いに接近しているのではなく、程よく散らばって存在していなければならないことになる。現在、この結論を定量的に導出する作業を行っているが、このことを直接的に証明したのは世界的にも本研究がはじめてである。
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